【インタビュー】「はままつ子育て世代活躍企業コンテスト」優秀賞・浜名梱包輸送株式会社様

健康経営を起点に、子育て世代も働きやすい職場をつくる

〜「はままつ子育て世代活躍企業コンテスト」優秀賞受賞・浜名梱包輸送が進める働き方改革〜

 

2025年7月・8月、当社主催の「子育て世代人材 採用力強化セミナー&相談会」を全4回にわたって開催しました。このセミナーにご参加いただいた企業様のうち、3社が「はままつ子育て世代活躍企業コンテスト」において、見事受賞されました。

受賞企業の皆様は、子育て世代が働きやすく、活躍できる職場づくりに向けて、社内でどのような取り組みを進めてきたのでしょうか。今回は、その具体的な取り組みや工夫について、受賞企業の皆様にインタビューさせていただきました。

 

浜名梱包輸送は2026年3月より健康経営優良法人2026に認定。厚生労働省の「ハタラクエール」や「浜松市ウェルネスアワード2026特別賞」も同時に受賞した。

 

浜名梱包輸送は、1962年にピアノを運ぶ輸送会社として創業しました。その後60年余りで、輸送・配送から、倉庫保管、流通加工までを一貫して手掛ける総合物流企業へと成長。従業員が1,200名を超えるなか、若手や女性の採用・定着が喫緊の課題となっていました。

そこで従業員が働き続けやすい環境を整える為、2024年秋から健康経営、福利厚生の充実化、人事制度改革などに取り組んできました。そして2025年には「はままつ子育て世代活躍企業コンテスト」で優秀賞を受賞。社員の声をどう制度に反映し、働き続けやすい環境を整えたのか。本社管理部総務人事室の髙井均室長と中村春香主任に話を伺いました。

 

輸送・配送、倉庫保管、引越しを軸に幅広い事業を展開

──現在展開している事業について教えてください。

髙井:来年、創業65周年を迎える当社は、静岡県内を中心に、名古屋、関東、東北へと拠点を拡大。時代とともに多様化する物流ニーズに、柔軟にお応えしています。

創業当初は楽器輸送からスタートし、現在は輸送・配送、倉庫保管、流通加工、引越しなどを幅広く手がけています。主要取引先には、日本を代表する企業が多くあります。

ピアノや精密機器など、傷や破損がないよう、特に丁寧な取り扱いが求められる製品の輸送を得意としてきました。他社では対応が難しいご依頼にも真心を持って向き合う姿勢は、創業者である会長から、現在の2代目社長へと受け継がれています。

その他には、宿泊や食事、大浴場やサウナ、宴会・研修などに利用できる「ホテルビラックス高薗」を運営しています。さらにウォーターサーバー、タクシー、農業などの事業も展開。磐田市では、古民家を活用し、貴重な美術品を展示する「浜名梱包輸送 シルクロード・ミュージアム」を手がけています。

また地域のスポーツや文化活動も支援するなど、創業以来、地域とのつながりを大切にしながら事業を続けてきました。

 

ジュビロ磐田や浜松交響楽団などに協賛し、アウェイ戦の荷物輸送や演奏会後の楽器運搬も担っている

 

若手・女性の採用・定着に向け、健康経営優良法人認定取得を目指す

──2025年に「はままつ子育て世代活躍企業コンテスト」で優秀賞を受賞されました。子育て世代の支援に取り組まれることになった経緯について教えてください。

髙井:子育て世代への支援は、それだけを目的に始めたものではなく、会社全体の職場環境を見直す取り組みの一環です。出発点にあったのは、若い世代や女性の採用・定着に対する危機感でした。当社は従業員が1,200人を超える一方、30~40代が比較的少なく、社員の平均年齢も高くなっています。

若い世代や女性に選ばれ、入社後も長く活躍してもらうには、労働条件や職場環境をさらに整える必要があります。将来にわたって事業を発展させるためにも、幅広い人材が安心して働き続けられる会社にしたいと考えました。

私が中途入社した2024年から、総務人事のメンバーで労働条件や職場環境の見直しを進めました。その一環として、同年9月ごろから健康経営を推進。社員の健康に加え、社内コミュニケーションや働き方、休暇制度なども幅広く見直していきました。

こうした取り組みを進めるなかで見えてきたのが、女性社員や子育て中の社員が抱える課題です。そこで子育て支援を重要なテーマの一つに位置づけ、さまざまな社員が長く働き続けられる環境づくりにつなげています。

 

お話を伺った総務人事室 室長の髙井氏(右)と主任の中村さん

 

仕事と育児の両立・食生活の課題などについて、社員の声を聞く

──健康経営優良法人の認定を目指すなかで、社員の声をどのように把握し、制度の整備につなげていったのでしょうか。

髙井:「健康経営」には、社員同士のコミュニケーションを促すという観点があります。当社は従業員や部署も多いため、同じ本社エリアで働いていても、顔を合わせたことのない社員がいました。そこで、社員同士が交流しながら、職場の課題について意見を交わせる座談会を、2025年5月と8月の2回にわたって開催したのです。

中村:1回目の座談会には、事務職や現場で働く女性社員12人が参加。20~30代の一般社員を中心に2つのグループに分かれ、「女性特有の健康課題」と「仕事と育児の両立」をテーマに、約1時間半にわたって意見を交わしました。総務のメンバーが各グループの進行役を務め、私もその一つを担当。

 

2025年5月に実施された座談会の様子。全員からさまざまな意見が挙がってきた

 

中村:事前アンケートをもとに、一人ひとりから普段感じている課題や要望を聞き、意見を交わしました。初めて顔を合わせる社員もいたため、率直に話せるよう、ケーキやコーヒーを用意。カフェで会話するような和やかな雰囲気づくりも意識しました。

参加者からは、「婦人科検診を受けたいが、費用の負担が大きい」「子の看護等休暇は無給のため、実際には有給休暇を使わざるを得ない」といった声が挙がりました。子育てを終えた社員からも、「自分たちが苦労したからこそ、これから子育てをする世代には同じ思いをしてほしくない」という意見が寄せられました。

男性社員も交えた2回目のテーマは、社員の食生活の改善です。当社は、シニア世代も多く、健康診断で再検査や精密検査が必要になる人もいます。そこで、日頃の食生活を改善するために会社として何ができるかを話し合いました。

「社員食堂に野菜などヘルシーなメニューを増やして欲しい」「社員食堂がない拠点でも、健康的な食事を取りやすくしてほしい」など、食環境の改善を求める声もありました。2回の座談会を通じて、健康や子育てに関する悩みだけでなく、働く場所や職種によって必要な支援が異なることも見えてきました。

髙井:座談会の意見だけで制度を決めたわけではありません。ただ、普段は表に出にくい社員の声を把握できたことは、その後の取り組みを具体化するうえで大きな意味がありました。会社側の考えだけで制度を整えるのではなく、社員が実際に困っていることを起点に、制度や職場環境を見直していったのです。

 

時間有休から常備型社食サービスまで、福利厚生を幅広く見直す

──具体的にどのような制度を導入したのでしょうか。

髙井:まず、2025年春に年間休日を108日から110日に増やしました。ただ、年間休日120日以上の企業も多く、まだ十分とはいえません。そこで休日数だけでなく、必要なときに柔軟に休める仕組みも整えていきました。

2025年秋には、年次有給休暇の付与日数を増やしました。あわせて、1時間単位で有休が取得できる「時間単位の年次有給休暇制度」を導入。それまでは1日または半日単位で、1~2時間の通院や子どもの送迎にも、半日分の有給休暇が必要でした。

さらに、有給扱いで連続2日取得できるリフレッシュ休暇を新設。子育て中の社員に限らず、通院や家族の用事など、それぞれの事情に応じて休みやすい環境を整えています。働く時間を柔軟に選べるよう、一部の部署ではフレックスタイム制も導入しました。

中村:私もフレックスタイム制を利用し、通常の始業時刻である8時30分ではなく、9時に出社しています。下の子がまだ小学生なので、朝の時間に余裕ができるのは助かります。

授業参観や通院などの際も、今は必要な2時間だけ有給休暇を取得。働く時間や休み方を、それぞれの事情に合わせて調整しやすくなったと感じています。

髙井:同年11月には、一部の部署ですが、食生活を支える取り組みとして、常備型の社食サービスを始めました。会社が費用の一部を負担し、社員は冷凍食品を1品100円か200円で購入できます。本社には社員食堂がありますが、働く場所や時間帯によっては利用しにくい社員もいます。そうした社員も、手軽に食事を取れるようにしました。

 

勤怠管理のクラウド化が、柔軟な働き方の土台に

──クラウド型の勤怠・給与管理システムの導入を進めていたそうですね。導入した背景と、導入後の変化を教えてください。

髙井:私が入社した時点で、勤怠管理システムの導入はすでに決まっていました。それまでは、1,200人を超える社員の勤怠をタイムカードで管理し、各職場で集計した内容を総務が確認していました。

当社には、24時間稼働する職場や、日によって勤務時間が異なるドライバーもいます。多様な勤務形態を一律に管理することが難しく、現場と総務の双方に大きな負担がかかっていたのです。

そこで、2025年に約1年間かけてシステムを導入し、社員の勤務実績を一元的に管理できるようにしました。一人ひとりの勤務時間を把握しやすくなり、さまざまな休暇制度や働き方を運用する基盤にもなっています。

給与明細の発行方法も大きく変わりました。以前は全社員分を印刷して裁断し、部署ごとに仕分けて配っていましたが、現在は各自のスマートフォンで確認できます。

中村: 給与明細の印刷や仕分けは、私も担当していました。退職した社員の分を除く作業などもあり、毎月かなりの時間がかかっていました。その作業がなくなったことで負担が大きく減り、空いた時間を採用や広報など、ほかの業務に充てられるようになっています。

 

子育て支援の先進事例から、制度と運用のあり方を学ぶ

──子育て世代への支援を考えるうえで、浜松商工会議所の子育て世代活躍セミナーにも参加されたそうですね。

中村:浜松商工会議所とは、採用活動などを通じて日頃からつながりがあり、セミナーが開かれる際には案内をいただいています。2025年に「子育て世代活躍セミナー」(全4回)を紹介されたとき、私自身も子育て中だったので、「これは参加したい」と思いました。これから子育てを迎える世代にも考えてもらいたいと思い、当時22歳だった同じ部署の女性社員と一緒に受講しました。

その少し前に開いた女性社員の座談会では、仕事と育児の両立をめぐるさまざまな課題が挙がっていました。そこで、ほかの会社がどのような制度を設けているのかを知り、当社に足りないものを考えたいと思ったのです。

──参加を通じて、どのような学びがありましたか。

中村:他社の具体的な取り組みを知ることができたのは、大きな刺激になりました。特に印象に残ったのは、保育園や学童に子どもを迎えに行き、自宅まで送り届ける送迎車を運行している企業です。私自身も、仕事を終えて18時までに子どもを迎えに行かなければならない大変さを経験しています。企業がここまで踏み込んで支援していることに驚きました。

一方で、参加者からは、「夫が育児休業を取得したものの、実際には自宅で仕事を続けていたため、十分に育児に参加できなかった」という話も聞きました。制度を設けるだけでなく、その目的を本人や職場が理解し、実際に利用できる環境をつくることが重要なのだと感じたのです。

参加企業との意見交換を通じて、当社の制度を客観的に捉え直すこともできました。すぐにすべてを取り入れられるわけではありませんが、他社の創意工夫を参考にしながら、社員にとって本当に利用しやすい支援とは何かを考えるきっかけになったのです。今後、制度や職場環境を見直していくうえで、多くのヒントを得られたと思います。

 

子育て世代の支援につながった職場改革を、コンテストで発信

──セミナーへの参加を経て、コンテストにはどのような経緯で応募し、何をアピールしたのでしょうか。

中村:きっかけは、セミナーへの参加後、浜松商工会議所からコンテストの案内がメールで届いたことです。私自身が子育て世代であり、新しいことには積極的に挑戦したいという思いもあったので、「当社も応募してみたい」と考えました。もう一人の採用担当者に相談すると、「せっかくなら受賞を目指そう」と背中を押してくれたため、応募を決めました。

発表では、この1年ほどで会社が進めてきた改革を紹介しました。時間有休やリフレッシュ休暇、フレックスタイム制など、働きやすさを支える制度です。いずれも子育て支援だけを目的に始めたものではなく、社員の健康や職場環境を見直すなかで、結果として子育て世代の支援にもつながりました。このほか、女性の健康や、社員とその家族の安心を支える取り組みについても伝えました。

制度の紹介だけで終わらないよう、実際に働く社員へのインタビューも行いました。制度をどのように利用し、仕事と子育てを両立しているのかを、本人の言葉を交えて伝えたのです。個々の施策に加え、会社全体で職場を変えようとする姿勢も評価していただけたのではないかと思います。

 

受賞によって生まれた、社員の意識変化と社外とのつながり

──優秀賞受賞後、社内外で変化はありましたか。

髙井:社内では、健康経営への取り組みや優秀賞の受賞が、社員に知られるようになりました。社内報で紹介したところ、社長も「会社はこれだけ変わっている。社員にも知ってもらい、お客さまにも伝えていこう」と発信するようになったのです。経営層や役職者が「健康経営」という言葉を使い、その重要性を伝えるようになったことは、大きな変化だと感じています。

中村:社外からも反響がありました。授賞式のオンライン配信を見た静岡県内の大手企業など、3社ほどから「取り組みについて詳しく聞きたい」「情報交換をしたい」と声をかけていただいたのです。

特に関心を持っていただいたのが、社員とその家族が24時間、医師や保健師などに相談できる「心とカラダの相談ダイヤル」と、女性用トイレへの生理用品の設置です。その後、実際に企業を訪問し、互いの制度や取り組みについて意見を交わす機会も生まれました。

髙井:これまで交流する機会が少なかった企業と接点ができたことは、当社にとって大きな刺激になっています。当社の事例を紹介する一方で、先方から教えていただくことも多く、新たな情報や人脈を得るきっかけにもなりました。

中村:社内報やイントラネットを通じて、導入した制度の周知も進めています。現在は、健康経営に取り組み始めた頃と比べ、社員の意識や健康状態がどのように変わったのかを把握するため、あらためてアンケートを実施しているところです。感覚だけでなく数値でも成果を確認し、今後の取り組みに生かしていきたいと考えています。

 

信念を持つ人の輪を広げ、多様な働き方の実現へ

──今後取り組みたいことと、この記事をご覧になっている方に伝えたいことを教えてください。

髙井:企業を変えていくのは、やはり「人」だと思います。

「働き方改革」の目的は、単に時間を減らすこと、休暇を取ることではありません。「限られた時間の中で、より創造的で充実した仕事ができる環境をつくること」、そして「社員一人ひとりが心身ともに健康で、誇りを持って働ける職場にすること」です。それが企業価値向上・生産性向上へと繋がっていくのです。

これまでのやり方を見直す勇気、新たな提案を歓迎する姿勢、チーム全体で支えあう文化が、真の改革を支える力となります。

最初から全員が同じ方向を向くのは難しいかもしれません。それでも、信念を持って行動する人が一人、二人、三人と増えることで、取り組みは少しずつ社内に広がっていくのではないでしょうか。

当社にも、まだ多くの課題があります。今後は、週4日勤務や1日6時間勤務など、勤務時間を限定した正社員制度も検討していく考えです。フルタイムで働けないことを理由に退職せざるを得ない人を減らし、それぞれの事情や価値観に合った働き方を選べる会社にしていきたいと思っています。

また、当社は全国に拠点があるため、本社周辺だけでなく、どの地域で働く社員も利用できる福利厚生を充実させることが課題です。制度を整えながら人材の定着につなげ、会社全体をより良い方向へ変えていきたいですね。

中村: 健康経営優良法人の認定を継続しながら、今後も新たな認定の取得や施策に取り組んでいきたいです。「物流会社でも、ここまでできる」と社内外に示すことが、会社の魅力を伝え、採用にもつながると考えています。私自身も、会社をより良くするためにできることへ、積極的に関わっていきたいと思います。私たちの事例が、同じような課題を抱える企業にとって、最初の一歩を考える参考になればうれしいです。

 


【社員の声】

子育てと仕事を無理なく両立できる、温かな職場です

磐田営業所
入社8年目・30代
3児の母

短時間勤務制度など、子育て世代向けの制度は、私の入社当時と比べて、年々充実しています。復帰後も、子どもの体調不良などで急きょ早退しなければならないことも度々ありました。時間有休制度が導入されてからは、給与への影響を心配することなく、安心して仕事に集中できています。部署によっては、リモートワークも可能です。子育てに理解のある、働く人に優しい会社だと感じています。

 

制度と仲間の支えで、子育てと仕事を両立できました

高薗倉庫グループ
入社19年目・40代
2児の母

職場復帰を前に、子育てや家事と仕事を両立できるのか、最初は不安を感じていました。一方で、子どもが小さいうちは、できるだけ一緒に過ごしたいという思いもありました。そこで、次女が3歳になるまでは「短時間勤務制度」を利用し、子育てを優先できる働き方を選びました。復職当初は倉庫スタッフとして働き、現在は事務を担当しています。有休やフレックスタイム制度を活用しながら、無理なく勤務を続けています。子どもの体調不良で急に休まなければならないときも、周囲の従業員が協力してくれます。家庭と両立しながら、安心して業務に取り組める職場です。

 

取材・文/西谷 忠和

 

浜名梱包輸送株式会社様 公式サイト
https://hamanakonpou.co.jp/index.html

 


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