浜松商工会議所 理事 会員支援部長 鈴木純一様 × 人材支援課長 深津正樹様インタビュー

企業のリアルな強みを引き出し、人材との出会いにつなげる力がある

 

浜松商工会議所理事 会員支援部長
鈴木 純一 様(左)

浜松商工会議所 会員支援部 人材支援課長
深津 正樹 様(右)

地域の企業が直面する深刻な人手不足に応えるため、浜松商工会議所は2017年に全国でも珍しい「人材支援室(現在は人材支援課)」を立ち上げました。以来、企業の採用支援に携わってきた鈴木さんと深津さん。お二人が最初に声をかけたのが、求人広告ライター協会の代表・関根でした。飾らない文章に込められたリアルな視点に共感し、セミナーや求人票の改善を依頼。実際の現場でどのような成果が生まれ、今後どんな期待を抱いているのか――関根と長い付き合いだからこそ話せる“リアルな声”を伺いました。

<記事のポイント>
〇関根との出会いはブログ記事。リアルで臨場感ある表現に「この人なら」と確信し、セミナー講師をオファー。
〇「求人票の公開添削」や個別相談で企業の本音を引き出し強みに変換。葬儀会社の事例では採用につながり、新たなPR機会も生まれた。
〇商工会議所人材支援課の求人制作でも効果を発揮。1職種で50人超の応募や定着率向上を実現し、“関根マジック”といわれるまでに。
〇近年は子育て世代の活躍をテーマにセミナーを展開。制度の盲点を突いた助言が経営者の納得につながり、採用力強化や離職防止に貢献。
〇浜松発の取り組みは全国に拡大。各地で導入が進み、地域間の競争力を高めるモデルケースとなっている。

商工会議所でも異例の挑戦──人材不足を支援する部署をゼロから創設

 

──お二人のご経歴と仕事内容を教えてもらえますか?

鈴木:浜松商工会議所では、2017年に全国でも珍しい「人材支援室」を立ち上げました。背景には地域企業の深刻な人手不足があり、「人材確保を専任で支援する部署をつくろう」という方針が示されたのです。立ち上げ当初のメンバーは私と深津、そして女性スタッフ1名。私は室長としてその中心を担いました。

前例のない組織だったためゼロからのスタートでした。限られた予算のなかで、できることを一つずつ積み重ねながら「地域企業の採用をどう後押しできるか」を模索。3年間人材支援室で経験を積んだ後、別部署を経て、現在は再び会員支援部に戻り、人材支援課として企業の採用支援を続けています。

深津:私は2017年の立ち上げから現在に至るまで、一貫して地域企業の採用支援に携わってきました。相談窓口の設計やセミナー運営、大学や行政との連携、そしてUIJターン人材の呼び込みなど幅広い業務を担当。特に、学生や転職希望者との接点づくりとしてLINE公式アカウントを立ち上げ、継続して運用しています。現在は人材支援課の課長として、これまで培ってきた仕組みと伴走スタイルをさらに磨き続けています。

具体性と臨場感あるコピーに納得。セミナー経験がなくても関根を迷わずオファー

 

──関根との出会いについて教えていただけますか。

鈴木:出会ったのは東京・後楽園の雑居ビルです(笑)。当時は施策も決まっておらず、まずは県外から移住者やUターン人材を呼び込む方法を模索していました。東京で個別相談会を開くことにし、そのタイミングで会うことになったのです。

深津:きっかけは私が見つけた求人広告ライターのブログ。それを書いていたのが関根さんでした。文章は飾らず実態に即していて、採用の知識がない私でも「なるほど」と納得できる内容でした。

例えば飲食店の接客スタッフの募集で、「美味しいまかないを出します」だけでは魅力が伝わりません。でも「産地直送の食材で仕上げる日替わり丼を、料理一筋30年のベテラン●●さんが腕をふるい、開店前に皆で頬ばる」と描けば、職場の温かい雰囲気まで感じられる。こうした具体的な表現に触れ、「この人なら企業の力になる」と確信し、鈴木に紹介しました。

鈴木:真夏の暑い日、雑居ビルに現れた関根さんは白Tシャツにジーンズ姿。汗だくで「本当に大丈夫か」と一瞬思いましたが、話すうちに誠実さと確かな知見が伝わり、その場でオファーを決めました。関根さんは「セミナー経験はないですが…」と謙遜しつつ快諾してくれました。

──実績がない中でよくオファーされましたね。

鈴木:当時は「とにかく挑戦しよう」という空気でしたし、会頭の任期3年の中で仕組みをつくる覚悟がありました。「まずやってみる」ことを優先した結果、関根さんとの事業の種も芽吹いたのです。

求人票にないリアルを届け、求職者一人ひとりに寄り添う支援

 

鈴木:相談会では専門の相談員が個別対応を行い、私たち職員もその横で耳を傾けていました。そこで印象的な場面がありました。相談者の一人が「浜松に移住するなら土いじりの仕事がしたい」と話したのです。相談員は求人リストだけでは対応できず困っていました。

一方、私たちは日頃から会員企業の事業内容を把握しているため、「庭なら青年部会長の会社、園芸ならあの社長の会社」と候補がすぐに思い浮かびました。そこで紹介すると相談員からも驚かれ、会議所ならではのネットワークの力を実感しました。

深津:このようにして後楽園での経験は私たちにとって後の活動につながる大きな一歩になりました。

鈴木:だから関根さんとは後楽園のあの場所を“聖地”と呼んでいます(笑)。

──その後、個別相談はどのように発展したのでしょうか?

鈴木:「はままつUIJターン就職寄り添い相談」へと進化しました。就職が決まるまで職員がLINEを使って無料で寄り添う仕組みで、新卒から中途まで対象は幅広いです。

深津:背景には若者流出の問題があります。静岡県は大学が少なく、多くの学生が県外に出ます。2017年には県外流出が9,000人超と全国ワースト1位でした。「浜松に戻りたい」「移住したい」と思う人を支える仕組みづくりが急務だったのです。

鈴木:私たちは首都圏の大学を訪問し、浜松出身の学生に地元の魅力を直接伝えました。市の交通費支援も活用し、2〜3年は集中的に大学を回り、浜松での就職を後押しする仕組みを整えました。

深津:サービスの中核はLINEです。電話やメールより身近で、登録のハードルが低いのがメリットでした。

鈴木:やり取りではフランクな姿勢を心がけました。「どんな仕事に興味あるの?」「次どうする?」と一緒に道を探す。必要なら人事につなぎ、面接の同席もしました。「親でも先生でもない、等身大の距離感」が信頼につながりました。

深津:さらに私たちは“経営者の人となり”まで把握しているのが強みです。「出身校の学生を応援したい社長」「毎月ボウリング大会がある会社」など、求人票に出ない情報を共有することで、求職者の安心感が高まり、面接の雰囲気が和むことも多いです。

鈴木:学生が聞きづらいことも代わりに確認します。「残業の実態」「完全週休2日の本当のところ」などリアルな情報を伝えることで安心につながります。

深津:コロナ期には大学が閉鎖され、相談相手がいなくなった学生が地元に戻り、想定を超える広がりを見せました。その結果、就職支援件数は過去最高となりました。

鈴木:内定後に親子でお礼に来てくれた学生もいます。現在、登録者数は1万4,000名を超え、“寄り添い”が信頼につながるサービスへと成長しています。

本音を引き出し、採用力を磨き上げる対話

 

──関根に依頼したセミナーについてはいかがですか?

深津:最初に依頼したのは「求人票作成セミナー」です。関根さんは講義をビデオで撮影し、自分で改善点を見直すほど丁寧に準備されていました。資料も分かりやすく、参加企業の満足度も高く、初回から手応えを感じました。

特徴的だったのが参加企業の求人票をスクリーンに映して添削する「公開添削」です。「これでは響かない」「こう書くと伝わる」と具体的に指摘し、場には緊張感と笑いが混ざる独特の空気がありました。厳しい指摘でも「すぐ改善できる」と喜ばれました。

──個別相談で印象に残る案件は?

深津:葬儀会社の相談が印象的です。求人を出しても若手応募が少なく、採用に苦戦していました。

鈴木:関根さんは「礼儀や言葉遣いなど“人間力”が磨かれ、どの業界にも通用する力が身につく」と視点を提示。華やかではなくても人生の大切な場面を支えることで早期成長できる点を強調し、求人票を書き換えたところ採用につながりました。

企業も「そんな見方があるとは」と驚き、その後、高校のマナー講座にもつながり新聞にも掲載されるなど新たなPRの機会も生まれました。

深津:企業自身も気づかなかった強みを引き出せた好事例でした。

1職種に50人超応募、定着率も向上――“関根マジック”

 

鈴木:私たち人材支援課が「就職相談員」を募集した際、求人原稿の制作も関根さんに依頼しました。自作では魅力が伝えきれなかったためです。1時間のヒアリングで、魅力だけでなく苦労する点も率直に共有しました。

深津:完成原稿は仕事内容だけでなく「どう成長できるか」まで具体的で整理されていました。外部視点も入り分かりやすく、多くの応募が集まり、男女1名ずつを採用しました。

鈴木:そのうち1人は元管理職。「待遇は良かったが、社会の役に立つ実感が薄かった。これからは“ありがとう”と言われる仕事がしたい」と応募されたのです。収入より“役に立つ実感”を選んだのです。

深津:この成功事例は他部署にも広がり、関根さんの原稿を基に職種別に調整して活用しました。すると、ある部署では1名募集に50人以上が応募。給与は突出していません。それでも応募が殺到したのは仕事の価値がクリアに伝わったからだと実感しています。

鈴木:飲みの席では“関根マジック”と冗談めかして呼んでいますが、効果は本物。採用だけでなく定着率も上がり、戦力として活躍している――採用側にとってこれほど嬉しいことはありません。

離職防止・採用力強化につながる“子育て世代視点”の新セミナー

 

──最近ではどんなセミナーを?

深津:2025年は「子育て世代の活躍」をテーマにしています。一般的には女性中心の制度説明が多いですが、私たちは一歩踏み込み、性別問わず子育て世代に適した職場づくりが企業にもたらす効果に注目しました。これが採用力強化や離職防止につながると分かれば、経営者も導入しやすいと考えたのです。

ある会社では育児目的の休暇制度があったものの一部しか給与が付かず、利用が進みませんでした。そこで関根さんは「いっそ全額給与負担にしては?」と提案。「月数万円の負担で“社員にやさしい会社”として信頼が得られる」と助言し、私たちも納得、会社も価値を実感しました。

浜松発の採用力強化セミナーが全国へ拡大

 

──他地域にも関根さんのセミナーが広がっているそうですね。

鈴木:とても良いことだと思います。商工会議所は元々、経営者に寄り添い支援するのが役割。対象が中小企業の経営者から学生・移住者に変わるだけで本質は同じです。むしろ就職支援は取り組みやすい部分もあります。

深津:このスタイルは効率的ではないですが、一人ひとりに向き合う分、成果が見えやすく事例にしやすい。日本商工会議所の会報誌で紹介されたり他地域からの問い合わせも増えています。

鈴木:香川県観音寺市でも導入が決まり、セミナーと個別相談がそのまま実施されています。取り組みが広がれば地域活性化や競争力向上にもつながると期待しています。